オルタナティブシアターこけら落とし公演『アラタ~ALATA~』観劇レポート


日劇、スカラ座、日生劇場、東京宝塚劇場…大正・昭和から続く日本のブロードウェイ=有楽町に、これまでなかったタイプのエンターテイメントシアターが誕生しました。その名は「オルタナティブシアター」!先日いよいよオープンした当劇場で開幕した、記念すべき第一作目「アラタ〜ALATA〜」の初日観劇レポートをお送りします!

 

『アラタ~ALATA~』観劇レポート

有楽町マリオン別館7階のエントランスをくぐり、客席につくと、観劇マナーに関する注意事項アナウンスは日本語と英語。大音量のオープニング音楽とそれに続くライティングワーク、プロジェクションマッピングで、まるでテーマパークのアトラクションに乗り込んだかのような没入体験が一気にスタート。

オープン初日のオルタナティブシアターに足を踏み入れた時の印象は、コンサートスタジオ、テーマパーク、ゲームセンター…この界隈にある劇場群とは全く違う内装と雰囲気。そもそも「オルタナティブ」とは「取って変わるもの」「もうひとつの」という意味の英単語。都内で最も劇場エンターテイメントが盛んな有楽町において「取って変わる」とは鼻息強めじゃないですか!

Miliによる音楽が歌詞付きで流れることはあっても基本はノンバーバル形式、つまり台詞のないストーリー劇。近年では『ワンピース歌舞伎』でも大絶賛を浴びた横内謙介の脚本と、スピード感あるアクションが印象的な時代物ステージや少年隊ミュージカル『PLAYZONE』、 劇団EXILEなどを手がける岡村俊一の演出による「伝統」と「今」を融合させた新感覚ジャパニーズエンターテイメント。

客席数400余りというのは、大劇場の多い有楽町界隈では群を抜くコンパクトさです。とにかく最初から終わりまでダンスと光と音楽、アクロバティックなパフォーマンス満載のスピード感あるステージが400席の濃密空間で味わえるので迫力がスゴイ。

サムライアクション・ディレクター、ダンスクリエイターとしても創作段階から作品に関わってきた早乙女友貴とElinaが、主役となる戦国時代のサムライ役、2020年に生きる少女という全くテイストの異なる登場人物を演じていますが、ミュージカルでは熟年の俳優さんが主人公の幼少時代までをこなすことも珍しくなく、年齢相応のキャラクターってどこか新鮮。
Elinaさんの等身大の演技とダンス、早乙女さんの身体力を駆使した殺陣には大きな拍手が起こっていました!お話は時代を超えた壮大なファンタジーですが、2人の心が通うシーンでは「静」の表現もしっかりと魅せてくれました。

ただ正直に言うと、バレエやパントマイムや来日サーカスなど、言葉の代わりに音楽、動き、佇まい、舞台美術などで楽しませてくれるステージは他にもたくさんあるわけで、言葉がないからこそもたらされる表現の工夫がもっとあるといいかなぁと感じました。
そもそも舞台の「生」の醍醐味とは「言葉以外に伝わるコト」そのもの。日本語を理解しなくてもわかるように「喋らない」だけではなく、ノンバーバルならではの仕掛けに驚きたかったかなぁ。

初日というせいもあってか、客席にはスーツ姿の男性客やダンサーの団体も多く見られましたが、これからは日本語のわからない外国人客、近くの大劇場よりも少し気軽に舞台を楽しみたい家族・友人のグループ客、2.5次元ミュージカルから観劇を好きになった若い観客など、スタジオアルタならではのスタイル、手法で「楽しみ有る町=有楽町」のエンターテイメントの領域をさらに広げていってほしいですね!新劇場オープンの瞬間に立ち会わせていただき、期待に胸がはずんだ一夜でした。

 

有楽町の新エンタメスポット、これからの展開にも期待

オルタナティブシアターがあるのは、有楽町マリオン別館(あるいはルミネ2)の7階。ビルの外側にあるエレベーターで7階に着くとそこは劇場のエントランスで、ロビーでは「CRAZYTOKYO」による天狗や忍者のパフォーマンス、太鼓や提灯の「和」を感じる飾りなど、開演前から観客を楽しませる工夫がいっぱいです。

ブラックを貴重にしたライブスタジオ型の客席は開放感があり、ここでも太鼓を叩く天狗が登場したりと、雰囲気が軽くて、そして若い!何ヶ月も前からチケットを予約して心待ちにする舞台がある一方で、このようにカジュアルに仲間と遊びに行けるショーが生まれたことは、「サラリーマンとマダムのための歓楽街」という有楽町のイメージを塗り替えるきっかけになるかも知れないですね。

 

<公演情報>
『アラタ~ALATA~』
オルタナティブシアターにて8月31日(木)まで上演中
https://www.alternative-theatre.jp

 

取材・文 平野 美奈