日比谷シャンテが変わる! エンターテインメント×ショッピングの新時代を創る最新技術とは?

 ©TOHO co., LTD.

2018年3月にリニューアルオープンした日比谷シャンテで、エンタメと消費体験の次世代創造プロジェクトがスタートします。デジタル技術を駆使した便利でエンタメ感溢れる取り組みということで、そんな日比谷シャンテの新企画・新サービスを少しだけご紹介します!

118.5m 等身大ゴジラが日比谷に出現!? 大迫力の新感覚アトラクション

日比谷シャンテを運営する東宝株式会社と日本マイクロソフト株式会社が手を組んだこのプロジェクトは「HIBIYA 2018」という名前がつき(なんて、なんて、そのまんまなんだ…!)近未来のショッピング体験を創ろう、というのが共通テーマ。

そんな中、日比谷の守護神ゴジラが先頭切って一肌脱いだのが、MRとAIを活用した日本初の屋外アトラクションイベント『ゴジラ・ナイト 日比谷ゴジラ迎撃作戦』です。実はかなり限られた人数限定ということで参加申込は終了していますが、ラッキーな当選者の方が体験できるスペシャルイベントがこちら。

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開催期間は5月24日(木)から29日(火)まで、場所は日比谷シャンテ前のゴジラ広場。プログラムは第一部 会議室での戦略会議から始まります。
MRと呼ばれる複合現実テクノロジー「HoloLens」を使った、映画のような仮想空間。そして第二部 作戦実行では全長118.5mのゴジラが目の前に、日比谷の街に出現!

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えーと、なんだろうそれは。(笑)
まず「MR」= 複合現実とは、目で見えている現実とデジタル世界を融合した状態のこと。つまり映画でしか見たことのないような景色が、ごっついMRメガネをかけるとすぐ目の前に現れるということなんだそうです。
屋外での臨場感あるMR体験が実現するのは国内初だそうで、どんな感じになるのか、当選していない私は抑えきれない好奇心をどうしたらいいのか! とりあえず、当日はSNSを全力で追いかけたいと思います。

待ち時間ゼロ、会計時間ゼロ♪ 日比谷グルメをもっと便利に楽しむ

日比谷で食事をするときの特徴といえば、他の街以上にお客さんが食事をする時間が集中していること。オフィスに勤める皆さんのランチや残業メシだけでなく、周辺の劇場で舞台を楽しむ(私のような…)人たちが終演後にドッと押し寄せるからです。
そんな時、できるだけ効率的にお店を選んで楽しく飲食できるようにする新サービスがこちら。


マイクロソフト「Microsoft Azure」の人工知能(AI)と、複合現実(MR)の「Microsoft HoloLens」を駆使したサービスで、簡単に言うと「事前に混雑状況がわかる」「お支払いもウェブで」というモノらしい。


館内5箇所のサイネージでレストランなど各店の混雑状況を表示するほか、携帯・PCからもアクセス可能。いち早く体験したい方は、地下2階のRingerHutで2018年6月1日(金)からウェブでの事前注文とお支払いができちゃうスマートサービスを導入するそうです。日比谷シャンテでササッと食事したい時の強〜い味方 RingerHut。入店と同時に熱々のちゃんぽんが出てくるなんて、うん、たしかに嬉しいかも。


加えて映画を観る人には、サイネージから私たちの年齢や性別を分析し、おすすめ映画の予告編を映し出してくれて(!?)、表示された予告編の映画チケットはローソンチケットでも購入できるというサービスも。
これからは何も決めずフラリと日比谷に来てサイネージの前に立ってみる、占いのような映画鑑賞も面白いかもしれませんね!

日比谷といえば劇場。劇場といえば舞台と客席のインタラクティブ。AIによってデータが蓄積されていくということは、従来のアンケートよりもずっと無意識レベルでの趣味嗜好なんかも分析できるようになるということだから、今後は日比谷の街全体がお店と人の間で相互作用するプラットフォームとなり、お買い物をすればするほど自分に合ったサービスが生まれる可能性が高くなる。つまり、日比谷シャンテはどんどん進化する!…ということで合ってますでしょうか。

 

まとめ

劇場や映画館が密集し、非日常と現実が交差するファンタジックな街・日比谷。こういった最新技術もエンタメ度アップ、便利度アップの一助になりそうです。リニューアルオープンを経てますます変わる日比谷シャンテ、注目ですね!

<日比谷シャンテ>
http://www.hibiya-chanter.com

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<イベント情報>
ゴジラ・ナイト「日比谷ゴジラ迎撃作戦」開催概要
期間 2018年5月24日(木)〜5月29日(火)
会場 日比谷ゴジラスクエア(日比谷シャンテ前広場)
* イベント応募申込は締切済。当選者以外もHoloLensと新・ゴジラ像と撮影できるフォトブースを利用可。
https://www.microsoft.com/ja-jp/business/azure/hibiya2018/godzilla.aspx

(取材・文 平野 美奈)

 

平野 美奈

夜明けの劇場 Theatre at Dawn, llc. 代表

東京・丸の内を拠点にカフェ空間を利用した朝活ライブや、都内各地の劇場・エンターテイメントカンパニーとコラボしての体験イベントをプロデュースしている。2014年より丸の内朝大学ミュージカルクラスを企画運営。初観劇は1992年のCATS札幌公演。

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演劇ファンに捧ぐ! 「東京ミッドタウン日比谷」「日比谷シャンテ」プレス内覧レポート

 

2017年からのリニューアルを終えた「日比谷シャンテ」と、間もなくグランドオープンを迎える複合施設「東京ミッドタウン日比谷」が、2018年3月22日 プレスお披露目の内覧会を開催しました。

思えば昨年から、東京宝塚劇場へ行けば道が工事中、日生劇場でミュージカルを観る前に食事を取ろうとすれば日比谷シャンテのレストランフロアが改装中、シアタークリエに向かう途中でシアターガイドを買おうとすれば書店消滅・・・。劇場ファンにとっては長く不安な時間が続いていました! 何がどうなって、それはいいのか悪いのか!?
今回は劇場を中心に行動するエンタメウォッチャーの視点から、新しくなった日比谷の様子をレポートします。

古き良き昭和の香りを残す日比谷が大変身!

あの懐かしい日比谷の街並みが、こんなにお洒落な大人の遊び場に変わりました!曲線美はそのままに、ダークブラウンと深いグリーンの色彩が艶っぽさを与えてくれた感じ。

日比谷シャンテ前の「合歓(ねむ)の広場」は「ゴジラスクエア」となり、ゴジラ像は新しく、かなり巨大化しました(ちなみに従来のゴジラ像は、ミッドタウン日比谷内TOHOシネマズへお引越し)。ふと見上げると「Chanter(シャンテ)」だった表記が「TOHO SCREEN & STAGE SINCE 1932 HIBIYA」に。1932年といえば、株式会社東京宝塚劇場(のちの東宝株式会社)が設立した年。小林一三先生にこの表示を見ていただきたかった!(涙)

ゴジラ像の横にできた「ローチケ日比谷チケットボックス」はウェブからの申し込みも可能で、作品によっては前から10列目以内の良席チケットもあるんだとか。朝が11:00開店のため、10:00スタートのチケット発売日には使えませんが、今日明日のチケットを買いたい時には便利かも。実際のところ、どれだけ取りやすいのか、むしろ日比谷に出てきてから「何観る?」なんて素敵なことが可能になっちゃうのか、ここは注目です。

地下通路からのアクセスも改良され、日比谷駅A4/A5横の出口とA11出口が直結に。天気が悪くても、開演ギリギリの時もこれで安心ですね♪

東京ミッドタウン日比谷の内部へ

東京ミッドタウン日比谷は、オフィスエリアと商業エリアを備えた複合施設。商業エリアの最上階6Fには時間貸しのワーキングデスクやイベントスペースも。とにかく窓からみえる日比谷〜丸の内の眺めが最高で、テラスには緑もいっぱい。


 

レストランはゆったりゴージャスに楽しめるメニュー構成で、6Fの「DRAWNING HOUSE OF HIBIYA」、3Fの「Billboard Café & Dining」ではパーティやコンサートも開くことができるんだとか。ラストオーダーが21:30なのでソワレの後には間に合いませんが、マチネの前後、あるいはお食事そのものをエンタメとして楽しみたい日にオススメです!

4〜5Fの「TOHOシネマズ」は、実は3Fに届くほどの客席構造になっているそうで、映画館でここまでの傾斜はあまり見たことがないかも。前の人の頭が視界に入らず、スクリーンを囲むようなスタジアム型になっているので、どの席でも見やすい!

「Premier Luxurious Seat」と「Premier Box Seat」は、からだを埋めるとほぼ目の前はスクリーンのみ。舞台挨拶ができるようにするためか、スクリーンの前のスペースがかなり広く取ってあるので、最前列でもそれほどストレスなく見られそうです。

TCX、DOLBY ATMOSはもちろんのこと、国産スピーカーを搭載していて音響は抜群! と、これは案内係のお兄さんに教えてもらいました。

そうだ、4つの味のポップコーン「明太マヨネーズ味」「コンソメパンチ味」「北海道バターしょうゆ味」「ソースやきそば味」も食べやすくて美味しかったですよ。
上層階のカフェから映画館へ下りたところで、楽しみすぎた私は時間オーバー。(汗) 残りは早足で駆け抜けます!

コンパクトで一体感のある吹き抜けのアトリウムでもイベントなどが行われるんだそう。お手洗いや授乳室はゆったりめに作られているので、お子様づれの方でも安心してお出かけできます。そして地下にはテイクアウトフードやお持たせに使えるスイーツ、デリなどが充実!是非チェックしてみてください。

<東京ミッドタウン日比谷>
https://www.hibiya.tokyo-midtown.com/jp/

日比谷シャンテの注目ポイントは、ゴジラパンと女子目線

ゴジラ像を横目で見ながら向かいにあるのが、香港飲茶の名店「添好運(ティム・ホー・ワン)」。内覧では「海老とニラの蒸し餃子」「ベイクドチャーシューパオ」「キンモクセイとクコの実ゼリー」を試食させていただきましたが、点心ってこんなに香りと歯ごたえが多彩だったかなぁと思うほどの豊かな味わい。ミシュラン認定のお店でもあるそうで、誰かと一緒のときはあれこれ頼んでみると楽しそう。

日比谷シャンテに入ってすぐ、カフェベーカリー「ル・プチメック」では、京都の人気ベーカリーの美味しいパンをテイクアウト/イートインの両方で楽しむことができます。この日は売り切れで試食できなかった注目商品が、ゴジラ・パン(写真は撮影用サンプル)! ゴジラの背びれを形どったチョコレート生地のパンにキルシュ付のドライクランベリーが練りこまれているとかいないとか(ま、食べてないのでわからないですけどっ)。

この他にも1Fにはカラフルで可愛らしい小物・衣服が並ぶセレクトショップや、高級マッサージアイテムとして名高いRefaの店舗がオープンしていました。プレゼント、観劇のおしゃれ着、観劇後のボディケアに重宝しそう。


 

そして3Fには「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」という名の書店が登場しました。本屋さん、戻ってきてくれてよかった〜。書籍の並びは若干違いますが、小説から雑誌、演劇・ミュージカル関連の本までが揃うジャンルの広さはそのまま、HMVとなっただけに映像の棚も。

イベントスペースもありましたよ。イベントの際は、本棚が移動できるようになっていて、客席が作られるんだそうです。

宝塚コーナーはスペースたっぷり。それからこの書店の大きな特徴が、「女性のための本コーナー」がとても大きいこと!メルヘンな内装で、ピンク多め、イケメン多め。癒しの空間が広がっています。

<日比谷シャンテ>
http://www.hibiya-chanter.com

昨年のリニューアルと、変わらないところ

日比谷シャンテのレストランフロアは昨年末にリニューアルが終わっていますが、1Fの「キハチ カフェ」、そして地下2Fの飲食店は大変オススメです! 往年の国内外スターの手形を左右の壁面に収めた「ザ・スター・ギャラリー」がそのまま地下2Fレストランフロアに繋がり、お一人様でもペアでも大勢でも楽しめるお店がずらりと並んでいます。リニューアルで内装の雰囲気がグっと大人っぽくなり、美味しくてキレイで健康的なメニューが増えました。今のところ、私のお気に入りは「She」のポークジンジャーランチ、「ひつじや」の日替わりカレーセット、「RingerHut TOKYO PREMIUM」の他店舗とは違う特製スープが味わえるちゃんぽん。かな。


 

ちなみに2F特設展示の宝塚衣装、B1Fの宝塚ショップ「キャトルレーヴ」、B2Fトイレに往年の日比谷劇場街の写真が展示されているのは変わりなし。これまでと同じく、上演中の舞台と一体となったキャンペーンや展示に期待できそうです。
当初、グランドピアノと五線譜をイメージして建築されたという日比谷シャンテ(言われてみれば・・・!)。今回の大改革で、街全体がゆるやかに歌い踊っている雰囲気が加わり、大人のカルチャースポットとしてさらに魅力を増したように感じました。
東京ミッドタウン日比谷と日比谷シャンテ、演劇ファンとしてもフル活用していきたいと思います!

<イベント情報>
日比谷の街をあげた観劇フェスティバル「Hibiya Festival」開催!
2018年4月26日(木)〜5月20日(日)
https://www.hibiya.tokyo-midtown.com/jp/event/4072/

取材・文 平野 美奈

 

 

平野 美奈

夜明けの劇場 Theatre at Dawn, llc. 代表

東京・丸の内を拠点にカフェ空間を利用した朝活ライブや、都内各地の劇場・エンターテイメントカンパニーとコラボしての体験イベントをプロデュースしている。2014年より丸の内朝大学ミュージカルクラスを企画運営。初観劇は1992年のCATS札幌公演。

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帝国劇場『ビューティフル』観劇レポート【ネタバレあり】

 

『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』等の大掛かりな舞台が繰り返し上演されている「キング・オブ・ミュージカル劇場」= 帝国劇場で、キャロル・キングの音楽で綴ったブロードウェイ・ミュージカル『ビューティフル』が開幕しました。

今年の『レ・ミゼラブル』日本初演30周年記念公演を逃した方、これからミュージカル観劇デビューをしたいという方、『ビューティフル』オススメですよ!

※この記事はネタバレを盛大に含みます。すでにチケットをお持ちの方は、舞台を観た後で読んでいただくか、今すぐ読むか、よーくお考えの上でお進みください。

 

『ビューティフル』観劇レポート

 

ストーリーは、かの有名なキャロル・キングがシンガーソングライターとして世界的スターになる前、作曲家時代の話を中心に進みます。1960年代のポピュラー音楽を用いたミュージカルは、『ジャージ・ボーイズ』『ドリームガールズ』『ヘアスプレー』等がありますが、この数年後にはボブ・ディランやビートルズによる新たなムーブメントを控え、レコード業界が相当に面白かった頃のお話。
察するに、記憶に残るフレーズを繰り返しながらキャッチーな振付を繰り出すキュートなボーイズバンド/ガールズバンドが人気を博した(?)時代。まさにミュージカル作品にピッタリの時代と言えそうです!

そんなわけで、物語はキャロルの人生を辿りながら、聞き覚えのある有名な曲や、実在したポップアイコンが次から次へと出てきます。このあたり、実際のドリフターズやシュレルズ、ライチャス・ブラザーズを知っている人にとっては胸キュン&笑いどころ満載。あれもこれもキャロル・キングが書いた曲だったんですね。
作曲家キャロルのパートナーは作詞家のジェリーで、この二人と対比するように出てくるのが、仲良しカップルのバリー(作曲家)とシンシア(作詞家)。4人全員が実在の人物ですが、当時の音楽チャートを賑わせたヒットメーカーである彼らは、ケンカしたり笑ったり、とても人間的に描かれています。4人が慌ただしく創作活動を続ける一方で、ブラウン管の向こうで輝く歌手の皆さんは常にキラッキラのキメ顔。舞台裏の現実とテレビ用スマイルが交互に現れるという対比がいかにも「ギョーカイ」らしく、思わず笑ってしまいます。

客席中が「思い出の中のあのアイドル、あのリズム、あの音楽!」を懐かしく迎え入れて、全身で揺れているような雰囲気。当時の音楽づくりの過程もよく描かれていて、音楽の拠点都市はカリフォルニアではなくニューヨーク、クリエイターはスタジオに缶詰めで曲を作り、完成したらプロデューサーへ持っていくという描写も新鮮で楽しめました。

 

 

キャストは、主人公キャロル役に平原綾香さん(観劇時のキャスト。ダブルキャストに水樹奈々さん)、夫ジェリー役に伊礼彼方さん、バリー役に中川晃教さん、シンシア役にソニンさん。

中川・ソニン演じる腐れ縁のようなカップルは細かなやり取りがいちいちキュートで、本作品のオペラグラス泥棒は間違いなく彼ら!この2人のリアルな人間味は、本作における美味しいダシのように効いていました。

 

キャロルを幾度となく悩ませる夫ジェリーは、情緒不安定で仕事がノってくるたびに「僕たちはどこまでも行ける!」と興奮したりライバルの活躍に落ち込んだりする困った奴なのですが、演じる伊礼さんの甘い歌声が素敵なのはもちろん、もともと劇作家志望でありながら大衆向けの音楽で食べていくことへの複雑な思いや、最後の登場シーンで発する新たな出発を伺わせるひと言など、ただのクズでは終わらせないキャラクター構築が目を引きました。

私見ですが、「たった3分のトラックで何が言えるのか。」と苛立つジェリーが、このミュージカルの登場人物として2時間40分の時間を与えられることで、どこか救われたように感じさせる。これも舞台マジックの粋なのかも知れないなぁと。キャロルの母親役の剣幸は、こういう人だったのだろうと思わせる説得力がとにかく素晴らしく、ザ・アメリカンなキャラで楽しませてくれた敏腕プロデューサー、ドニーを演じる武田真治は、いつでも忙しく時計を気にしていた頃から「君のためならいつだって時間を取るよ。」と言うまでの心情の変化や、最後に少しだけ歌う場面がとってもハートフル。キャロル役の平原さんは、ピアノの前に座った時やマイクの前に立った時、魂から音楽が発散されているようで、本当にキャロル・キングが自分の曲を奏でているようでした。

彼女のナチュラルで無防備な演技に見とれていたら、カーテンコールの挨拶で「舞台のオモテとウラで頑張ってくれているスタッフの皆さんありがと〜!」と舞台袖でブンブン手を振っていて、ナチュラルで無防備なのは地なのかもしれないと(笑)、歌手としての大きさにも胸を打たれました。今回のキャストの皆さんからは、歌のチカラ、歌い手さんの劇場全体を引き受ける包容力をすごく感じましたが、往年の有名曲を違和感なく日本語で聴かせてくれた訳詞の湯川れい子さん、劇場をコンサートホールのような空間に染め上げた指揮・オーケストラの皆さんにも大きな拍手を贈りたいと思います!

ひとりのアーティストが書いた歌の数々がひとつの物語となり、彼女自身の軌跡となり、のちに世界的なシンガーソングライターとなるキャロル・キングの人生は、それ自体が最高にミュージカル的。アンサンブルキャストも含め、気を抜くと二度見することになりそうな個性派パワフルボイスが揃っているだけに、それぞれの感性がぶつかり合う創作のシーンでは「これはミュージカル?コンサート?」とわからなくなる感覚さえしましたが、終わりが近づくにつれ、音楽と共に泣いて笑って生きるミュージシャンの生き様をそのまま見ているかのような高揚感に襲われました。

 

等身大の美しさを教えてくれる、この夏オススメの爽やかミュージカル!

 

苦悩さえも明るいメッセージソングに変えて前へ進むしなやかさ、「ごく普通の女の子が歌うからこそ、普通の人生を送るリスナーに届くんだよ。」という等身大のメッセージ、そんなテーマの本作品のタイトルが『ビューティフル』であること。歌詞に「雨」という言葉が象徴的に使われていることや、舞台アーチを飾る、織り物のように繊細な柄のモチーフ(これは、キャロルが自身の声でレコーディングした大ヒットアルバム「Tapestry(つづれおり)」を連想させます)。きらびやかに見える音楽業界で「普通」の心のまま世界中から愛されるまでになったキャロル・キングが、私たちに贈ってくれた応援歌なのかも、と感じずにはいられない大きくて優しい舞台でした。

耳に心地良いキャロル・キングの音楽と、男性客の心も掴む60年代サウンド。この作品が帝劇の新たな人気レパートリーとなることを祈りつつ、キャロル・キングの自伝でも読んでみようかな。

 

<公演情報>
『ビューティフル』
帝国劇場にて8月26日(土)まで上演中
https://www.tohostage.com/beautiful/

 

※日比谷シャンテでは、パネル展や東京會舘「カフェシャポー」特別メニューなどコラボ企画が開催中!
http://www.hibiya-chanter.com/eventnews/detail/?id=180

 

(文/平野 美奈)

 

平野 美奈

夜明けの劇場 Theatre at Dawn, llc. 代表

東京・丸の内を拠点にカフェ空間を利用した朝活ライブや、都内各地の劇場・エンターテイメントカンパニーとコラボしての体験イベントをプロデュースしている。2014年より丸の内朝大学ミュージカルクラスを企画運営。初観劇は1992年のCATS札幌公演。

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オルタナティブシアターこけら落とし公演『アラタ~ALATA~』観劇レポート

日劇、スカラ座、日生劇場、東京宝塚劇場…大正・昭和から続く日本のブロードウェイ=有楽町に、これまでなかったタイプのエンターテイメントシアターが誕生しました。その名は「オルタナティブシアター」!先日いよいよオープンした当劇場で開幕した、記念すべき第一作目「アラタ〜ALATA〜」の初日観劇レポートをお送りします!

 

『アラタ~ALATA~』観劇レポート

有楽町マリオン別館7階のエントランスをくぐり、客席につくと、観劇マナーに関する注意事項アナウンスは日本語と英語。大音量のオープニング音楽とそれに続くライティングワーク、プロジェクションマッピングで、まるでテーマパークのアトラクションに乗り込んだかのような没入体験が一気にスタート。

オープン初日のオルタナティブシアターに足を踏み入れた時の印象は、コンサートスタジオ、テーマパーク、ゲームセンター…この界隈にある劇場群とは全く違う内装と雰囲気。そもそも「オルタナティブ」とは「取って変わるもの」「もうひとつの」という意味の英単語。都内で最も劇場エンターテイメントが盛んな有楽町において「取って変わる」とは鼻息強めじゃないですか!

Miliによる音楽が歌詞付きで流れることはあっても基本はノンバーバル形式、つまり台詞のないストーリー劇。近年では『ワンピース歌舞伎』でも大絶賛を浴びた横内謙介の脚本と、スピード感あるアクションが印象的な時代物ステージや少年隊ミュージカル『PLAYZONE』、 劇団EXILEなどを手がける岡村俊一の演出による「伝統」と「今」を融合させた新感覚ジャパニーズエンターテイメント。

客席数400余りというのは、大劇場の多い有楽町界隈では群を抜くコンパクトさです。とにかく最初から終わりまでダンスと光と音楽、アクロバティックなパフォーマンス満載のスピード感あるステージが400席の濃密空間で味わえるので迫力がスゴイ。

サムライアクション・ディレクター、ダンスクリエイターとしても創作段階から作品に関わってきた早乙女友貴とElinaが、主役となる戦国時代のサムライ役、2020年に生きる少女という全くテイストの異なる登場人物を演じていますが、ミュージカルでは熟年の俳優さんが主人公の幼少時代までをこなすことも珍しくなく、年齢相応のキャラクターってどこか新鮮。
Elinaさんの等身大の演技とダンス、早乙女さんの身体力を駆使した殺陣には大きな拍手が起こっていました!お話は時代を超えた壮大なファンタジーですが、2人の心が通うシーンでは「静」の表現もしっかりと魅せてくれました。

ただ正直に言うと、バレエやパントマイムや来日サーカスなど、言葉の代わりに音楽、動き、佇まい、舞台美術などで楽しませてくれるステージは他にもたくさんあるわけで、言葉がないからこそもたらされる表現の工夫がもっとあるといいかなぁと感じました。
そもそも舞台の「生」の醍醐味とは「言葉以外に伝わるコト」そのもの。日本語を理解しなくてもわかるように「喋らない」だけではなく、ノンバーバルならではの仕掛けに驚きたかったかなぁ。

初日というせいもあってか、客席にはスーツ姿の男性客やダンサーの団体も多く見られましたが、これからは日本語のわからない外国人客、近くの大劇場よりも少し気軽に舞台を楽しみたい家族・友人のグループ客、2.5次元ミュージカルから観劇を好きになった若い観客など、スタジオアルタならではのスタイル、手法で「楽しみ有る町=有楽町」のエンターテイメントの領域をさらに広げていってほしいですね!新劇場オープンの瞬間に立ち会わせていただき、期待に胸がはずんだ一夜でした。

 

有楽町の新エンタメスポット、これからの展開にも期待

オルタナティブシアターがあるのは、有楽町マリオン別館(あるいはルミネ2)の7階。ビルの外側にあるエレベーターで7階に着くとそこは劇場のエントランスで、ロビーでは「CRAZYTOKYO」による天狗や忍者のパフォーマンス、太鼓や提灯の「和」を感じる飾りなど、開演前から観客を楽しませる工夫がいっぱいです。

ブラックを貴重にしたライブスタジオ型の客席は開放感があり、ここでも太鼓を叩く天狗が登場したりと、雰囲気が軽くて、そして若い!何ヶ月も前からチケットを予約して心待ちにする舞台がある一方で、このようにカジュアルに仲間と遊びに行けるショーが生まれたことは、「サラリーマンとマダムのための歓楽街」という有楽町のイメージを塗り替えるきっかけになるかも知れないですね。

 

<公演情報>
『アラタ~ALATA~』
オルタナティブシアターにて8月31日(木)まで上演中
https://www.alternative-theatre.jp

 

取材・文 平野 美奈

平野 美奈

夜明けの劇場 Theatre at Dawn, llc. 代表

東京・丸の内を拠点にカフェ空間を利用した朝活ライブや、都内各地の劇場・エンターテイメントカンパニーとコラボしての体験イベントをプロデュースしている。2014年より丸の内朝大学ミュージカルクラスを企画運営。初観劇は1992年のCATS札幌公演。

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