ごはんがすすむ、「本物」のトッピング
神田駅で昭和30年代からカレー専門店として多くの人に愛されてきた「ふくてい」。約3年前に神田駅の改修工事のため、有楽町へと移転してきた。
「いまはスパイスが効いたカレーや、インド系のカレーなど様々な専門店がありますが、うちのコンセプトはあくまでもスタンドカレーです。言うなれば誰にでも受け入れられるカレーなんです」(「ふくてい」を運営するメトロ商事の青木部長、以下同)
誰にでも、というのは実は難しい。特徴がなければ忘れられてしまう、ふくていのカレーはそれでも印象に残る何かがある。
「とにかく丁寧に作っています。価格を下げながら美味しい物を作るには、手間をかけるしかないんです。カレーのスープは6時間か7時間はかけて、トリガラをしっかり煮込むところから始めます。
それから、力を入れているのがトッピングです。それだけでもごはんが食べられるようにと、これもすべてキッチンで手作りで作っています」
ステーキカレー、トンカツカレーなど、確かにどれもトッピングが大振りで味もいい。
「ステーキは、牛のサーロインを80g使っています。これもその場で焼くのでジューシーさが違います。トンカツカレーもカツカレーではなく、あくまで“トンカツ”なんです。豚肉は冷凍ではなくチルドの肉で、生パン粉を使って揚げ置きせずにお客様にお出ししますからサクサク感があります」
さらに驚くべきはその価格。ステーキカレーで600円、トンカツカレーも500円という有楽町であることを考えると、信じられないほどのコストパフォーマンスを誇る。
「仕入れはもちろん苦労することが多いですが、何より現場で調理しているスタッフの努力のおかげです。うちには入社49年目のベテランがいますが、とにかく丁寧に、でも時間を短縮してカレーを作ってくれていますからね」
東日本大震災がターニングポイント
路地裏でも奥まった場所にある「ふくてい」は、昼時に関わらずいつでもお客さんが出入りしている。
「立地としては、移転してきてすぐは厳しかったですね。
神田でやっていた頃のお客さんもたくさん有楽町にも来ていただいていたんですが、この路地の奥まであまり人は来ませんから、路地の入口に立って呼び込みもしていました。その状況に変化があったのは、実は東日本大震災がひとつのキッカケでもあるんです。あの日は、帰宅困難の方が路地にも大勢いました。もうコンビニにも食べ物はないですから、飲食店はどこも混んでいました。あのときに有楽町の近辺で働いている方に『こんなところにカレー屋があったんだ』と認識されたんだと思います。その後、お客さんが増えていって、徐々に口コミなどで広がって行ったんだと思います。昼時には新橋の方から来てくれる方もいますよ」
昭和30年代から変わらぬ味を作り続ける「ふくてい」。神田から有楽町へと移っても、変わらぬ味がある。
「お客様のなかには、何十年も前に食べた味を求めてやって来られて、涙を流しながら食べて行かれる方もいます。
有楽町は食に関して、超高級店からガード下の庶民的な店まで、ある意味では何でもある街です。
それだけに、この近所で働いている方は美味いものを知っているんです。そこが難しいところではありますが、安くてもしっかりとした付加価値をつけ、そこに丁寧な接客があれば支持していただけるんじゃないかと思っています」
昭和30年代からの歴史に、有楽町での歴史が加わる。「ふくてい」の味は、徐々にではあるが、“神田の味”から“有楽町の味”として人気を得つつある。
カレー専門店「ふくてい」
住所 | 東京都千代田区丸の内3-6-7 |
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TEL | 03-5220-3313 |
営業時間 | [月~金] 11:00~23:00 [土]11:00~21:00 |
定休日 | 日曜日 |
席数 | 15席 |
有楽町today編集部が有楽町についての情報を発信します。