和菓子の中でお手軽に食べられる串団子。しょうゆ味のみたらしやあんこやヨモギなど、バリエーション豊富な味わいが実に魅力的な串団子は色んな人を魅了してきました。
今回は串団子についてコラムを書いていきますが、串に刺さってる団子の数が違うことに注目しまして、調べてみたらきわめて興味深い内容にたどり着きました。
団子の数の違いには、隠された歴史や意味が存在していることが分かりましたので、マニアックな視点ではありますが皆様にお伝えしたいと思います。
「だんご3兄弟」という童謡がかつて流行りましたが、串団子といった時に、串に何個の団子が刺さっていると思い浮かべますか。
最近は4つが多いように思われますが、関西では5つの串団子もありますし、3つや2つの場合もあります。
串団子の数の違いは何なのか、続きをどうぞご覧ください。
串団子の起源は下鴨神社のお供え物の御手洗団子とされている
まずは、串団子の起源をたどっていきます。
串に刺す団子が存在していた最古の記録は、京都にある下鴨神社で御手洗(みたらし)祭の時、神前に供えた物だと言われています。
ちなみに、当時の団子は現在のような上新粉で作られた物ではなく、どんぐりなどの木の実を粉にして練った物だそうですから、食感も固めでアクもあり、甘みに乏しかったのだろうと想像できます。
お供えされた串団子は、小さい団子を竹串の先に1つ、少し間を置いて4つ続けて刺した串(いわゆる5つ刺し)が扇形に10本並び、団子が全部で50個ついていたそうです。
お供えした後は家に持ち帰り、厄除けのために火であぶって、醤油をかけて食べたものが、御手洗祭から名前をとって「みたらし団子」の誕生となったわけです。同時に5つ刺しの団子の起源にもなっています。
(出典:「日本一の団子」 サライ編集部・本多由紀子編)
京都は歴史ある和菓子の宝庫でありますが、みたらし団子も京都が発祥だったとは実に興味深いです。
5つ刺しの団子は関西圏に根強く残っている
京都で生まれた串団子は、先ほども説明致しましたが、1本の串に5つ刺さっていました。団子が美味しかったからでしょうか、たちまち大人気となり、5つ刺しが全国に広まっていきました。
後に関東地区などで、5つ刺しから4つ刺し、3つ刺しなどに変化していきますが、京都を中心とした関西地区では、今もなお5つ刺しの串団子が多く存在しております。
団子自体の味わいは時を経て、上新粉を使うようになったり、醤油やあんこなど進化を遂げて現在に至りますが、5つ刺しの文化は変わることなく確実に受け継がれています。
4つ刺しの団子は関東圏で生まれた
一方で4つ刺しの団子についても、生まれた理由や歴史がありました。
江戸時代には串団子は5つ刺しが主流となっており、1本あたり5文(江戸時代の貨幣単位:1文は約25円)で販売されておりました。
しかし、1756年頃に4文銭が鋳造され流通すると、混雑のお店で4文銭1枚しか払わずに、5つ刺しの団子を食べるという不正をする客が増えてしまい、困ったお店が苦肉の策で団子の数を4つにした、という記録が残っていました。
(出典:江戸物価辞典 著書 小野武雄)
その後は、4つ刺しも全国に広まっていき、関東地区以外でも見られるようになりました。
文化的な理由の5つ刺し、商売的な理由の4つ刺しという対比があるのも面白いですね。
団子の数の違いに故郷を思い、感じる
5つ刺しと4つ刺しの団子の違いを、故郷に重ねて感慨深く記した江戸時代のグルメ日記がありました。
江戸歌舞伎の名優、三代目中村仲蔵(1809年~86年)が大阪で公演を終えて江戸に戻り、茶店で団子を食べた時に、「これまでは団子五ツざしなり。ここに至って江戸前になりしを嬉しく」と思ったそう。
そして「四ツざしの団子尊き桜かな」という句を残します。
(出典:手前味噌 著 中村仲蔵、和菓子を愛した人たち 虎屋文庫)
江戸時代の串団子は関西では5つ刺しで江戸が4つ刺しだったと明確に分かりますし、仲蔵にとって江戸が故郷であり、4つ刺しの串団子で郷愁を感じ、美味しく尊いものであるとまで断言しています。
団子の数の違いで故郷を思い、感じる。何とも心が温まる素敵な日記ではありませんか。
串団子にこのような素敵な歴史が刻まれているとは感慨深いですね。
皆様の身近にある串団子を食べてみて、歴史などを紐解いていくと、新たな物語が見つかるかもしれません。
有楽町や銀座界隈にも、団子にまつわるストーリーがあれば、今後探求していきたいと思います。
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