銀座ミツバチプロジェクトが繋げる都会の輪(マロニエゲート)


マロニエゲート屋上菜園

有楽町・銀座の真ん中に蜂の巣箱がある不思議

飼育状態を観察

有楽町の街をミツバチが飛び交い、せっせと蜜を集めているのをご存知だろうか。2006年に始まった「銀座ミツバチプロジェクト」では、銀座の屋上でミツバチを飼育する活動をしている。

ミツバチの行動範囲は半径約2㎞と言われており、その蜜源は皇居、日比谷公園、浜離宮、そして銀座界隈の街路樹だという。もちろん、有楽町にも彼らは飛んで来ては、足に花粉をたっぷりと付け、蜜を集めて巣に持ち帰っている。

 

2010年には、マロニエゲートの屋上にも巣箱が置かれ、プロジェクトの運営管理とミツバチのお世話をしている田中淳夫さんを始めとするプロジェクトのメンバーの方々は、定期的に巣箱を見回り、ミツバチの健康状態をチェックし、ハチミツを採取している。今回は許可を得てマロニエゲートの屋上へとお邪魔して、田中さんに色々なお話を伺った。

「巣箱のなかには、板が何枚か入っていてそれぞれがミツバチの巣になっています。板1枚にびっしりハチがついてだいたい2000匹はいます。花粉を持っているのが外勤蜂で、結構歳を取った熟練の蜂です。蜂は生まれてすぐ働き蜂になりますが、最初は内勤蜂として巣の掃除とか、女王蜂のお世話や育児、巣を作ったりして経験を積んでから外勤蜂になるんですね」

外勤蜂が持って来た花粉を巣穴に落とすと、内勤蜂がそれを奥へと押し込む。そんな彼らの熱心な仕事ぶりを眺めていると、ここが都会のど真ん中であることを忘れてしまう。

「ハチミツの素となるのは花の蜜ですが、花の蜜をハチが蜜胃という胃袋に貯めて巣まで戻ってくるんですが、その間に酵素で花の蜜のショ糖がブドウ糖と果糖に分かれるんです。それを巣に戻ってから内勤蜂に口移しで渡し、そこでまた内勤蜂のお腹のなかで分解され、ということを繰り返し巣に詰めて行ってようやくハチミツになるんです。ですから、人間が作ろうと思ってもなかなかできません。まず、花の蜜を集めるのが難しい。ミツバチにしかできないですからね(笑)」

ミツバチってすごい!と思うと同時にハチミツがさらにおいしくなりそうな話だ。ただ、せっかく集めたハチミツをいただくというのが、なんだかミツバチに申し訳ない気持ちにもなってくる。

「蜂の巣を作るには蜜蝋が必要で、ミツバチがハチミツを食べて分泌するんですが、1gの蜜蝋を分泌するのに10倍の量の蜜を消費しなければいけません。蜂がいちから巣を作るのではなく、私たちがこうして巣を提供して環境を整えることで、子育てもしやすくなります。その分、蜜が余るのでそれを私たちがいただくというわけです。まあ、巣のマンションを提供した分、お家賃をいただくというんでしょうかね(笑)。本来だったら一生懸命働いて集めた蜜を取られたら怒るじゃないですか、でも、そういうことはないですよね」

なるほど。実際、寒い時期にせっかく子育てに最適な温度に温まった巣箱を開けると、彼らも怒るのだという。

写真:マロニエゲートの屋上に、まさかミツバチの巣箱があるとか! ミツバチの健康状態をつぶさに観察する

ミツバチが住みやすい街ということ

巣箱をチェック

それにしても、なぜ銀座でミツバチを育てるということになったのだろうか。
「都会で養蜂のためのビルの屋上を探している養蜂家がいるという話を伺って、『街のなかでミツバチが飼えるなんて』と当時は信じられませんでした。でも、他の場所でも安全にやっていたり、パリの街のなかでミツバチを飼っているという話を聞くうちに、安全に配慮するなら貸してもいいのではないかと。そういう話をその養蜂家にしたら、その方が『街のなかでやるんだったら、しっかり学んで途中で辞めたとならないように学びなさい』というんです。なぜか我々がやるということになっていて、全然話しが違うんです(笑)」

想像するに大変そうだということで、なかったことにしうようと一時はなったそうだが、「消費するだけの銀座の街で、もしハチミツが採れたら、それは面白い」ということで、一念発起してやってみようとプロジェクトが立ち上がったのだという。そうして始まったミツバチの飼育だったが、1年目から160㎏ほどもハチミツが採れた。昨年2013年には、ついに採取量は1tを超えたというのだからすごい。

「世界中では、ミツバチが突然いなくなったとかハチミツも採れないという話が聞かれます。そのなかで都会にあって、皇居や街路樹、マロニエ通りのマロニエや並木通りのリンデン(菩提樹)など、様々な蜜源がこの周辺には咲いています。蜂の世話をしていると、彼らを通してこの街の周りの生態系が見えてくるんですね。例えば、桜が咲いてミツバチが飛んで行き受粉をして実を付ける。それを鳥が食べにくる。そういう、これまで見えなかったものをミツバチが見せてくれているんですね」

いまでは、近隣の小学校の児童たちが理科の授業として巣箱を観察に来るのだという。こんなに実践的で実のある体験は都会ではなかなかできない。素晴らしい学びの場ともなっているようだ。

写真:銀座ミツバチプロジェクトの世話人・田中淳夫さん。少なくとも週に1度以上は巣箱をチェックしている

田中さんが忘れられない、あるシェフのひと言

ハチミツの採取

田中さんによると、このプロジェクトを通じて、さらに貴重な体験をしているのだそうだ。「もともと銀座は江戸時代から400年、職人の街なんですね。職人の街だったら、職人の技を使ってハチミツを使った商品を作っていただこうという思いがありました。マロニエ通りでは、ハニーフェアということで、ポール・ボキューズをはじめとした10数店舗で銀座のハチミツを使ったモノを提供していただいています」

その他にも、松屋ではスイーツに、アンリ・シャルパンティエさんではマドレーヌ、資生堂パーラーでもハチミツを使ったスイーツが提供されている。さらには、バーテンダーがハニーハイボールを作るなど、この街のなかでこうした取り組みが広がっているのだそうだ。

「ミツバチのおかげで、どんどん人と人とのコミュニティーが繋がり、それがいま僕らの活動を大きく支えてくれているんです。始めた当初は、まさかこういう風になるとは思わなかったですよ(笑)」

なかでも、田中さんが印象に残っている、ある有名なホテルのシェフが言った言葉があるという。
「その方も銀座のなかで技を磨き、プライドを持ってやってきたと。ただ、地域のコミュニティーとは繋がっていなかったと話していたんですね。それが、僕らの作業に一緒に参加して、採れたものを街のなかでまた商品にする、そういう活動を街の人と一緒に作っていることを感じて、そのシェフが、『なんだか銀座の一員になれた気がする』とおっしゃってました」

いまマロニエゲートの屋上には、巣箱のほかにも緑化を進めており、そこにはこれから新潟の枝豆をはじめ、色々な地域の作物の苗を植えていくのだそうだ。そのガーデンで作物を育てるのは、地元の小学生や中学生、障害者の方たち、さらには銀座らしくクラブのママや、バーテンダーも参加するするのだというから興味深い。

マロニエゲートの屋上で見た光景が、これからさらに広がって行くのが楽しみである。

写真:ミツバチの巣をハチミツを採取する機械に入れる。遠心力でハチミツを採る

銀座ミツバチプロジェクト(マロニエゲート)

住所 中央区銀座2-2-14 マロニエゲート屋上菜園 ※一般の見学は行っておりません。
中央区銀座2-2-14
有楽町トゥデイ編集部
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